2007年3月31日土曜日

リバタリアン宣言

蔵研也 著  朝日新書032

クニガキチントという考え方がいかに愚かであるかということを、さまざまなことがら、政治、教育、その他の各種社会問題を例に挙げて、語りつくしてくれている本だといえます。著者の熱意が強すぎる感じがしますが、あたりまえであると思い込んでいることへの見方を変えさせてくれるきっかけとなる一冊です。

2007年3月29日木曜日

NHK プロフェッショナル 宮崎駿 氏

 NHKの番組 プロフェッショナルで宮崎駿氏の仕事ぶりが紹介されていました。新作の映画の構想を生み出すプロセスを記録したドキュメンタリーで、HDVカメラをディレクターが手持ちで取材を続けたものが、編集されて番組になっていました。興味深い点は2つ。宮崎氏の面白いものをつくろうとしているプロセスでの産みの苦しみの様子がうかがい知ることができたことが、その一つ。もう一つは、ディレクターが撮影した映像です。1週間こもった期間に、インタビューを避けるようになる宮崎氏に対して質問するシーンでは、畳の上にカメラを置いて話したりしていました。その他に、窓から吹きすさぶ風に揺れる木々、こもっていた家の遠景など、挿入されるカットについても、定番の表現なのかもしれませんが興味深く見ることができました。いつ再放送されるかは知りませんが、ものをつくる人、映像をつくるひとには、ぜひ視聴することをお勧めします。

2007年3月28日水曜日

変わらぬ状況を映すことは難しい?

 地震被害の報道がなされる中で、倒壊した家、倒壊等に伴ってさらに破損したものなどをクローズアップした映像が伝えられます。情報としては、倒壊しなかった部分、倒壊したものとしなかったもの、その周辺の状況など、得たいことがらはたくさんあります。にもかかわらず、変わらなかったものの映像というのはおそらく絵にならず、変わった部分のみを切り取るためだろうと思いますが、報道される映像からは、全体像をうかがい知ることが困難です。衝撃的でない映像によって重要な情報が得られることもあると思うのですが、そのような映像を流すことについては、放送上の意味があまりないのだろと勝手にお察ししています。
 また、ある番組では、キラーパルスなる用語を説明しながら、木造家屋の倒壊の説明をしていました。既存のもので明らかに補強が必要であると思われる建物が倒壊しているように映像からは見受けられ、該当する建物についての耐震補強や建て替えの重要性と、それが困難であったりする現状を捕らえ直して説明すればよい流れだと感じました。しかしながら、何らかの新しい情報を取り出して説明しようという努力をするがために、結局は焦点がずれたような妙な説明をすることになります。そういう内容が広く放送されてしまうことに、目立ったことを伝えないといけない放送業界の宿命めいたものを感じてしまいます。

2007年3月26日月曜日

社会学入門

見田宗介 著  岩波新書1009

 社会学が関係としての人間の学であると断言されたもと、世の中のさまざまな事がらについて考える際のもとになる見方について述べられています。理想と現実について、テロリズムとの戦い方、自立について、環境問題の捉え方、交響するコミューンのモデルの提示など、ものを考えるにあたって、大いなる刺激を得る思考の軌跡が散りばめられています。どのような立場の方にもぜひともお勧めしたい一冊です。学生時代に読んで刺激を受けた「気流の鳴る音」の作者と同一の著作者であることを知り、驚くとともに、なるほどあの本の著者がこういうものの考え方にたどり着かれたのだと納得してしまいました。

2007年3月23日金曜日

大いなるエネルギーが注がれている教科書

 高校の教科書のいくつかを見てみました。その編集には大いなるエネルギーが注がれ、非常に多くの知識が極めてコンパクトに詰め込まれていることに、改めて気づかされました。そこには結構専門的な知識が盛り込まれていて、そこに書かれている内容が理解できれば、社会で求められる人材として十分にやっていけそうに思えます。
 問題として感じたことは、コンパクトに編集されたそれぞれのことがらが、コンパクトには語りえず理解し得なさそうな形で圧縮されているということです。旅行などにで便利だとされる圧縮して小さくなったタオルがあります。小さな円筒形の塊が水につけるとタオルになるというものです。教科書に盛りこまれた事がらも水を得て、実際の姿になると実に大きなものになります。実際には、その大きなものについて考え理解するということことが重要なのですが、コンパクトに納められたものをなぞるだけでは、その理解に行き着くことは難しく、ましてやその中身の面白さに気づくことはさらに難しいのかもしれません。
 あるテーマについて、深く考え、理解へと向かうことを学習だとすれば、コンパクトに凝縮された知識が納められている教科書というものは、学習の際に辞書的な役割以上の力を発揮するものではなさそうに思えます。教科書なるものの存在の発生、さらにはあり方そのものについて、検定の是非や有無などということを超えて、考えてみなくてはならないと思わされてしまいました。

知財革命

荒井寿光 著  角川ONEテーマ21 C-120

内閣官房・知的財産戦略推進事務局長という立場の著者が、知的財産について、世界でどのように扱われ日本でどのように扱っているかという現状を明確に示してくれています。芸術や文化をビジネスにつなげることの重要性や、そういうことを担う人材としてのプロデューサーの育成の必要性が説かれています。知財検定というものの検定試験が2005年から開始されていることも紹介されていて、教育機関の中で知財ということに対して、どのように取組んでいけば良いかということのヒントも得られる一冊です。

グーグルが無料経済という土俵を作り上げた中で、それを超えるビジネスモデルが存在する可能性について示唆されています。ミクシィやハテナブックマーク、YahooのSNS構想、mF247などの事例が、運営者からのインタビューも交えて紹介されています。2006年の夏ごろから連載された文章の集積だそうですが、半年前の春に発行された「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」という著書と併せて読むと、一連の流れが意識でき、今後の展開を模索するきっかけを得ることができます。

グーグル Google 既存のビジネスを破壊する

佐々木俊尚 著 文春新書501

Googleのことについて、どのように始まり、どのように成長してきたかを知るには格好の一冊です。ちょうど一年前の2006年4月に発行されたものですが、面白いのは、この2007年1月に発行された「次世代ウェブ グーグルの次のモデル」という続編?をあわせて読んでみることです。1年も経たずにどんどん変化が進んでいることに気づかされてしまいます。

2007年3月22日木曜日

採用力のある面接

辻太一郎 著  生活人新書212

著者は、元リクルート社員で人事部採用責任者として1万人以上の学生を面接する経験を持つ方だそうです。面接をする側にとってのマニュアル本なのですが、面接される側が読むと得るものは大きいと思えます。面接の受け方のノウハウが書かれた本より、面接を受けるものにとって有用な情報が得られる一冊です。

いまどきの「常識」

香山リカ 著  岩波新書969

お金、社会、メディア、政治など、少し考えてみればなるほどそのとおりだと思わされることがら、しかし、普段なにげなく生活してると、まったく無頓着に意識しないままになっている重要なことがらについて、明快に語られています。ハローワークにあった「自分らしい仕事を見つけよう!」という垂れ幕に怒りを覚え、「どんな仕事だっていいじゃないか」「とにかく何かやってみよう」というメッセージが掲げられる日がこないとダメだという主張などにも、強く共感を覚えました。

仕事とセックスのあいだ

玄田有史 斎藤珠里 共著  朝日新書024

雑誌アエラで行われたアンケート調査の結果を元に、セックスレスとなる原因分析などがなされています。主張されていることが、必ずしもアンケート結果の分析内容から明確に語れるものではなかったりするのですが、ワーク・ライフ・バランスについて考える際の参考になる一冊です。

NHK問題

武田徹 著  ちくま新書635

ラジオ放送に始まりNHKの歴史を知ることができます。ラジオ体操というものがどのようにして行われることになったのかという経緯についても書かれています。NHKの受信料の徴収方法について議論される中で、ぜひ読んでおきたい一冊です。支配せず、支配されないという生き方を目指す中で、公共的なコミュニケーションが必要となり、そこにNHKの役割があるであろうと示されている。

2007年3月14日水曜日

「人生の答」の出し方

柳田邦夫 新潮文庫

ノンフィクション作家の断章が散りばめられています。
ドキュメンタリー映像の製作者が本で主張するケースが紹介されていて、
映像で言い尽くせないことがあるという話など、そういう見方があるのか
と思わせられる話がいろいろ散りばめられています。

生きがい療法という話では、治らず死に到るとされる病の中で、生きる
方々について紹介されていて、そこで示されている3つの心得、
前向きな姿勢で病気と闘い、1日の目標を自覚して全力投球する、
人のためになることをする、ということは普段何気なく生きているような
自分自身にとっても有用なことばです。

昭和20年の堀田善衛の「広場の孤独」に次のような台詞があるということも
紹介されていますが、これにもまた驚かされます。
「現代の人間は、交通通信(コミュニケーション)が便利になるに従って
より孤独になってゆくのではないか」

頭にいろいろな刺激を与えてくれる一冊です。

2007年3月11日日曜日

心のこもった答辞

ある学校の卒業式
1週間に1度出向している日本建築専門学校の卒業式に出席しました。
多くの学生が寮で生活して4年間を過ごすこの学校では、
卒業生の仲間意識というものは、
そうではない一般の学校と大いに異なるものがあります。

今年の卒業式は、いつもより増して、その共同意識が強調されたものでした。
特に答辞は、出席者全員の感動を誘いました。
感謝の気持ちや今後の決意など、基本的なことをしっかり表明しながらも、
卒業生自身のことばで、入学できたこと、在学したことに対する
喜びや誇りが、素直に表現されていました。

式というものにおいて、その形式が非常に重要である一方、
そこに心がこめられることの大切さを改めて感じさせられました。

その後の謝恩会も含め、
卒業生ひとりひとりの喜びが伝わる場に触れることができた1日でした。

佐賀市内を歩いてみれば

佐賀大学の鳳雛塾にお邪魔するにあたり、
初めての佐賀訪問で、市内の何を見ようかと観光情報誌を見たところ、
有田、唐津など周辺都市が多く紹介されていて、
佐賀市内そのものにはあまり多くの情報が掲載されていません。

得ることのできたことは、
佐賀城の御殿が復元されている。
ひなまつりで市内の各所で雛人形の展示等がされている。
というような情報程度でした。

歩いてみると、
最近あちこちで見かけるのと同じような風景で、
商店街の空き店舗が目立ちました。
また、住み手を失ったであろう住居がちらほら見られたりもします。

が、そういった中で、あちこちに、
昔ながらの蔵や住居が残っているもののに出くわしたり、
また、美味しいコーヒーがいただけるお店もいくつか発見しました。

佐賀市内に限らず、街の中で面白いもの、いいものに出会うためには、
歩くのが一番だと改めて確信しました。

2007年3月10日土曜日

佐賀の鳳雛塾 とても頑張っていらっしゃいます

佐賀大学内に事務局を構える鳳雛(ほすすう)塾にお邪魔して、
塾の様子を拝見すると共に、小、中、高等学校にも提供されている
起業家教育の中身について伺うことができました。

慶応大学のケースメソッドを利用した塾の方法はとても面白く、
この方法であれば、知識を伝達するという形でなく、社会において、
ものを考える力そのものが養われるということを実感として確認しました。

また、小、中、高等学校との取り組みにおいても、
打ち合わせから、授業時間の中まで、
かなりの労力をかけ、
片手まで行っているのではない、
社会について学ぶことのできるプログラムを
しっかり実践されていることを確認しました。

大学の中での認知度がさほどでなさそうなことが意外で、
起業家教育の大きな柱として佐賀の中でより発展されることに
大いなる期待をしてしまいます。